今回は、任意の削除請求(裁判外に、本人や代理人が任意に削除を求める手続き)に関して述べます。
任意の削除請求は、サイトの管理者やサイトがサーバーを置いているレンタルサーバー会社に記事の削除(送信防止措置)を求める手続きです。
任意なので従う義務はありませんが、プロバイダ責任制限法に基づいて、削除請求に従う場合と従わない場合の基準・従う場合の日数などのガイドラインが定められており、ある程度画一的な対応が期待できます。
今回は「amebaブログ」「livedoorブログ」などのブログプロバイダについて、要求してくる削除請求の方法をまとめます。
なお、以下にまとめたのはあくまで任意の手続きなので、実際に記事を削除(送信防止措置)するかしないかは基本的に各ブログプロバイダの裁量に任されています。
1. ブログ会社への任意の削除請求は2通り
ブログ会社に任意の削除を求める方法は2通りあります。
一つはメールフォームやお問い合わせ窓口から任意に削除を求める方法、もう一つは「テレサ書式」という法的に意味のある書面を用いて削除を求める方法です。順に解説します。
1-1.メールフォームや問い合せ窓口に削除を求める方法
あまり一般的ではありませんが、メールフォームや問い合わせ窓口に問い合わせを行うことで削除を実現できることもあるかもしれません。
ただ、ほとんどの場合は後述の「テレサ書式」による方法を案内されるだけのことが多いようです。
筆者の場合、Amebaブログのみ過去に1度だけフォームから担当者の方と数回メールのやり取りを行うだけで削除に応じてもらえたことがあります。
ただその時も、本人確認書類のPDFを添付したり、テレサ書式に書くような内容は全て盛り込んだり、なるべくテレサ書式による削除請求に近づけたのが大きかったのだと思います。
なお、「ブログ会社」ではなく「会社がやっているブログやメディア」「個人のブログ」に関しては、プロバイダ責任制限法の対象ではないので逆にメールフォームによる削除を求めるのが一般的です。
1-2. 「テレサ書式」を用いて削除を求める方法
ブログ会社に任意の削除請求を行う方法として最も標準的なのは「テレサ書式」と呼ばれる書類を送付して削除を求める方法です。
テレサ書式とは、テレコムサービス協会(テレサ協)が発行している書式で、任意の削除請求を出す際の業界標準になっています。書く内容としては、
- 連絡先(氏名・住所・連絡先(電話番号やメールアドレス))
- 掲載されている場所
- 掲載されている情報
- 侵害されたとする権利
- 権利が侵害されたとする理由
- 本名を発信者に開示しても良いか
といった内容となります。これを、指定された書式に記して郵送することになります(会社によっては、書式の内容をフォームに入力することで郵送したものとみなして対応してくれるところもあります。ライブドアブログやFC2ブログなど)。
1-3. テレサ書式を出した場合の流れ
書式がブログ会社に届くと、ブログ会社はまず権利侵害が実際にあったかどうかの判断を試みます。対応は、
- ブログ会社が権利侵害があったと認めた場合
- 権利侵害があったかどうか微妙な場合
- 権利侵害がないと判断した場合
それぞれで別れます。
まず、権利侵害があったと認めた場合は当該記述を削除(送信防止措置)し、送信防止措置依頼書が届いたので送信防止措置を講じた旨を発信者に通知します。
次に、権利侵害がないと判断した場合は当該記事は削除せず、その場合削除しなかったことを申立人やブログ記事の作成者に通知するかも会社によりまちまちです。
最後に、権利侵害があったかどうか微妙な場合ですが、ブログ会社は発信者に対して「送信防止措置の依頼が届いているが、こちらで送信防止措置をとっても差し支えないか」という照会(送信防止措置に関する照会書)を配達記録郵便などを使って送付します。これに対して、発信者から送信防止措置への同意があった場合・発信者が自主的に削除した場合・7日以内に回答がない場合は当該記事は削除されます。
なお、反論があった場合でもプロバイダ側に相当と認められた場合には削除されます。
加えて、問題としている記載がいわゆるリベンジポルノに当たるような画像・動画である場合、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律に基づき、プロバイダが発信者に照会して回答を待たなければならない期間は7日から2日に短縮されます。
2. 実際に送信防止措置依頼書を出した結果
筆者はこれまで、自分で、また弁護士を通じて10通以上の送信防止措置依頼書(テレサ書式)を送付してきましたが、結果として全ての依頼で「ブログ会社では権利侵害があったかどうかの判断が微妙」であるとして発信者に照会が行っています(メールフォームから対応して頂いたAmebaのみ、「当該記事を削除しました」との返答があったのみなので照会を行わずAmebaの判断で削除した可能性があります)。
そして、照会が行われたうち1件を除く全件で発信者が自主的に記事を削除しています。
なお、残りの1件は発信者が「表現の自由」を理由にあげ削除に不同意の回答を行い、それをうけてブログ会社も削除しない判断を下したので、ブログ会社に対して削除と発信者情報の開示を求めて提訴したところ、いずれも勝訴判決を得ています。
このことから、仮にブログ会社が独自に「権利侵害に当たらない(ので削除しない)」との判断を下してきたとしても、裁判所の判断とは違い法的裏付けはないので、訴訟手続きを行えば削除や発信者情報の開示が得られる可能性はあるということがわかります。
3. 送信防止措置依頼書(テレサ書式)を出すリスク
また、送信防止措置依頼書(テレサ書式)を出すリスクとしては、「発信者に自分が削除を希望していることがバレる」ことがあげられます。
テレサ書式を出す時点で、あなたは名誉毀損やプライバシー侵害、場合によってはリベンジポルノの掲載といった深刻な権利侵害を受けているわけですから、そうした被害がさらに悪化することを恐れるのは当然です。
しかし実際問題として、私はこれまで10件以上テレサ書式を送り発信者に削除を希望していることが露見し続けてきましたが、今に至るまで書面を送ったことで再度”炎上”したり、書面を晒されたりしたことはありません。
発信者の立場で考えてみれば当然のことで、権利侵害を指摘されたにも関わらずこれを放置し、さらに「権利侵害を指摘されたこと」をネタにさらに権利侵害を重ねれば、もし裁判になった時に不利になったり(具体的には、被害が拡大したとみなされて損害賠償額が上がる)、民事の手続きでは解決困難だとみなされて刑事事件として立件されたりする可能性が上がります。
よほどの信念をもって権利侵害を行っていたり、あなたに個人的な恨みがあるのであれば格別、あなたをさらに陥れる行為は発信者にもなんの利益ももたらさないわけです。
ですから私見としては、発信者にあなたの削除請求が露見するリスクは多少あるけれども、インターネット上にあなたの権利侵害が残り続ける不利益を考えればこうした手続きに踏み切ることも真剣に考えるべきだと思います。(もちろん、これは一般論であり、個別の事情によっては慎重にならざるを得ないと思います。例えば相手が「炎上上等」のようなキャラクターで、過去に何回も名誉毀損で有罪判決を受けているとか。)
おわりに|参考文献
この記事は以下の文献を参考に執筆しました。